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ネット生保、ライフネット生命がうまくいかない理由と業界の矛盾点

ネット生保のライフネット生命の業績があまり良くありません。

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などで、既存の生保・医療保険などの手数料率の高さが指摘されていますが、この生命保険・医療保険の業界については、コミッション(手数料)が安い商品は売れないというのが構造的な宿命になっているように思います。

 

1.保険を理解している人がいない

まず、一般の方で生命保険や医療保険に自分の意思をもって自分で保険金額を決めて入るという人はほとんどいません。

必要性はなんとなく知っていても自分から行動するのではなく、人から言われて(営業マンに勧められて)入るのが一般的です。

また、必要だなと思っても、自分では当然保険について詳しくないので誰かに相談しなければなりません。相談するとなると「保険会社の営業マン」もしくは「保険ショップ(乗合代理店)」になるわけです。

そうなると当然ですが、こうした保険営業マンや保険ショップは自社の利益最大化を目指して行動します。

コミッション(手数料)の高い商品をなるだけたくさん売る」というのが使命となります。「生命保険・医療保険は「損」をする金融商品」などでも書かれていますが、保険は原則的には損をする商品ですから、必要最小限が原則になるわけですが、売り手にはそうする必然性が無いため、必要以上の保険加入を進めることになります。

保険ショップやFP相談が中立というのは嘘です。です。
「数多くの保険会社の中から最適な保険を提案します」という言葉は「数多くの保険会社の中から(保険販売店にとって)最適な保険を提案します」ということなのでしょう。

もちろん、一部には良心的な販売スタイルを持っている人もいるとは思います。ただ、生き馬の目をくりぬくような保険業界でそういう人が長期間生き残っていけるとは思えませんが…。

 

2.ネット生保が成功すると生保業界は縮小する

一方でネット生保については、「自分で必要な保険や保険金額を判断できる人」という人がお客さんとなります。

ライフネット生命保険の業績が厳しいのは「そういうお客さんが想像以上に少ない」ということが原因なのでしょう。

 

ただ、こうして自分で保険について判断できる人が増え過ぎると、今度は保険業界全体にとっての危機が生じることになります。

 

日本人は保険が大好きです。好きというよりも、リスクを過大評価する国民性ともいえるかもしれません。ですから、日本は世界第2位の保険大国となっています。

こうした世界最大級の保険残高について、もしも日本人の多くが保険に対して合理的に判断するようになれば、間違いなく保険残高は大きく減少することになります。
それだけ、今の日本人は無駄な保険料を支払っているということになるわけですが、日本の保険会社の大半は生き残れなくなるでしょう。

 

ここ10年程度でネット証券が流行し、既存の証券会社の経営が悪化したのとはわけがちがいます。
ネット証券の場合は手数料は大きく下がりましたが、それに合わせて市場参加者も増えました。市場は拡大し合計でパイが大きくなったのです。

 

一方で、ネット生保が主導権を握るようになった社会では、多くの日本人が生命保険・医療保険の必要性を理解することで、パイは相当量小さくなってしまうのです。

 

ネット生保が夢見る世界は生命保険・医療保険というものの必要性、重要性が小さくなった社会なわけです。そういう世界を既存生保が望むわけはありません。

保険市場がここまで拡大してしまうと、市場のパイを小さくすることを望む保健関係者はいません。しかしながら、消費者が賢くなってしまうとパイは間違いなく小さくなってしまいます。

このような矛盾を抱えているため、ネット生保は上手に飛躍することができないのだと思います。