「給与所得控除」で差し引かれる額は、収入に応じて増え、いまは年収が1000万円以上になると上限額の220万円で頭打ちになります。政府は、この上限額を引き下げて年収800万円から900万円を超えると増税になる方向で与党との調整に入りました。
例えば、年収800万円で頭打ちとなる場合は、年収850万円でいまよりも年1万5000円程度、900万円では年3万円程度、増税になります。ただ22歳以下の子どもがいる人は増税にならないようにする方針です。
国税庁によりますと、民間企業に勤める人で年収が800万円以上になるのは全体の9%程度になります。
年収800万円をこえるサラリーマンは全体の上位9%といわれたら確かに高所得者といえるでしょう。
ただ、じゃあ、その高所得者というのはそれほど貰っているのか?って言われるとそうでもないんです。
こちらの記事にもありますが、年収1000万円から上は所得税の税率のアップといった負担増はもちろんですが、児童手当の削減、幼稚園などの給付金の削減といった受け取れるお金も少なくなります。
日本の所得税はまだ安い方だ!なんて意見もありますが、給料の30%は社会保険料として徴収されています(15%は会社負担だけど会社から見れば給与と同じ)。
その上で所得税+住民税がかかっているわけで、負担割合でいえばすでに相当なものになっています。
いや、でも金持ちが負担しないと
所得再分配で公正な社会を築くということは賛成です。
でも、直近の増税案はフローに対する増税ばっかりなんです。
んで、ストックに対する税金は優遇されたままです。
たとえば、税金だけでも年収1000万円の人は所得税20%+住民税10%+α(社会保険料負担)があります。税金だけでも100万円収入をふやしても30万円は持っていかれます。
一方で、株の利益は税率20%(一率)です。ちょっと前までは優遇税率で10%でしたね。株で1億儲けても税金は2000万円しかとられません。このあたりって微妙な気がしますよね。
労働という時間拘束が大きな収入よりも、資産運用の収入の方が税率が大きいというのはちょっと理解しがたいところがありますね。担税力や公正な負担という面で考えたら資産性の収入の方に税金を課す方が公正だと思われます。
普通でもこれなのに、パラダイス文書でも報道されたように、タックスヘイブン(租税回避地)などを活用して節税に勤しんでいるわけです。
フローの労働収入を重課すると普通の人は金持ちになれない社会に
先祖から土地や資産を継承できなかった一般人にとって、最大の財産は労働力です。
労働資本などとも呼ばれますが、働いて稼げるお金が最大の財産なわけです。
上の記事でも書かれているので端的に書くと、一般人が金持ちになろうと思ったら
- 収入を増やすこと
- 支出を減らし貯蓄すること
- 最小限の努力で賢く運用すること
このサイクルを回すしかないわけです。(1)(2)を通じて資金を貯め、まとまった金額にして運用し、その資産収入の割合を徐々に増やしていく。この流れを続けていけば資産が数千万、億といった単位になるわけです。
でも、そのフローの一番上を締め付けられると、(2)(3)への流れが進まなくなります。そうなってくると、それこそ宝くじや博打のような投機、あるいは起業等で大成功するしか金持ちになる道は閉ざされます。
分断されてはダメ
ただ、ブクマとか見て思うところとしては、金持ちからとるならOKというスタンスの人も多いことです。敵を分断して叩くというのは常套手段です。
国は自分たちの無駄遣いを先に解消するのではなく、叩きやすい敵を見せることで、自分たちの問題は棚に上げて、増税方向に世論を持っていこうとしているわけです。
サラリーマンに対する増税議論を行うのであれば、それと同時に国も身を切る施策を打たなければならないです。
また、前述の資産性所得の件もそうですし、補助金バラマキといった問題もあります。そのあたりを先に解決せずに、取りやすいサラリーマンから先に抑えとけってのは甚だ問題だと私は考えます。